産褥入院1日3万は高すぎるか?/母がいない人と産後うつの人、どちらが優先? - 妊娠出産をただただ記録するブログ

産褥入院1日3万は高すぎるか?/母がいない人と産後うつの人、どちらが優先?

産褥入院と産後ケアについて考えています。
前の記事から続きます。

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補助されるべきは助産院では?


横浜市のモデル事業をはじめ、全国の産後ケア補助事業は
産褥入院する産婦に助成金を出すものなのですが

本当は、補助しなければいけないのは、
産褥入院を受け入れる、助産院・産院の側なのではないでしょうか。

毎日新聞の記事を読み、韓国の産後ケア事情を見てきた結果、
そう思うようになりました。

現在の問題は「産褥入院は高くて利用できない」よりも
「産褥入院を受け入れている助産院が満員である」
「そもそも近くで産褥入院を受け入れる施設がない」
ということではないかと思ったのですが、どうでしょうか。

(そして、利用者が低所得の場合には、それはそれで
助成をする、ということなのだと思います。)

産褥入院「7日で20万」は高いのか?


確かに、産褥入院は1日2~3万ですので
最初は私も利用をためらいました。

でも、こちらの記事にある通り、お金はかかっても

自分にとって必要だと考え直して利用しました。

そして、利用後は、この金額でやむを得ないし、
むしろ安いとすら感じるようになりました。
(詳しくは、「産褥入院利用者として思うこと」に。)

新婚旅行の予算は平均50~70万円と言われます。

それと比較して、産褥入院の「1週間20万円」は
一般的なご家庭で払えない金額ではないと思うのですが、
いかがでしょうか。

それに、もし母親が存命で、産後のサポートをしてくれると考えたら
私はそれには20万円以上の価値を感じると思います。

なお、産後入院の発達している韓国・台湾でも
同程度の金額で、公的助成はありません。

韓国人・台湾人はぽんと払っているのに、日本では「贅沢だ」
「そんなに払えるのは一部の人だけだ」という批判(?)が
多いのはなぜなのだろうなあと思っています。
(そう批判するのが気に入らないということではなく、単なる興味として。)

エステやアロマテラピーに頼らなければ収益が出ない


毎日新聞の記事で取材された助産院では
産褥入院は採算がとれない事業で、
お産の利益でなんとか運営されていることが分かります。

おそらく、産褥入院だけで割りに合うような収益を上げようと思ったら
韓国の産後院のように、エステ、整形、アロマテラピーをオプションでつけて
利用者一人あたりの単価を上げていかなければならないのだと思います。

しかし、実際に利用した私は、産褥入院にそういうサービスを望んでいません。

ただ寝ていたら食事が出て、きれいに畳まれた洗濯ものが届いて
心配ごとがあれば助産師さんが24時間相談に乗ってくれる、
日本の助産院の家庭的な産褥入院に満足しています。

助産院側に経営努力を求めるだけでは
サービスが変質してしまうのではないかと心配です。

産後ケアの補助は、助産院(施設側)に対する助成にはできないのか
また、助産院側はどのような補助を望んでいるのか
議論が必要だと感じます。


「産後ケア」の必要性


産後ケアについてこんなに熱く語っている私ですが、
産後ケアに税金を入れてほしいと要望することに
当初、やや抵抗を感じていました。

私の場合、実家が頼れないのはもともと分かっていたことです。

義母の助けを断ったのも(義母の健康不安がありやむを得ないとはいえ)
自分ですし、忙しい夫と結婚したのも、すべて自分の選択です。

そんな環境で、子どもを持ちたいと思い、
自分で決めて出産するのだから、責任をとって当たり前。
夫と二人で全部受け入れて頑張るべきだ。

なんとなく、そんな考え方をしていました。

しかし、産後ケアについて調べていくうちに
絶対に必要な場面はあるので、私が対象になるか否かはさておき
もっと充実すべきことなのだと思うようになりました。

頼る家族のいない私が、産後の日常生活に支障をきたすほど
重大な会陰裂傷を負ったときや
子どもの入院を長くサポートしなければならなくなったとき
それでも、頼る先がない現状には不安を覚えます。

「産後ケアのいま」に続く「記者の目 産後ケアのあり方を考える」に
以下のような記述があります。

武蔵野大学附属産後ケアセンター桜新町の萩原玲子センター長は、
「産後ケアの定義や目的が定まっていない現状には問題がある。
営利目的ではなく福祉として行われるべきもの」と指摘する。

(毎日新聞2014年11月25日「記者の目 産後ケアのあり方を考える」)



また、出産に関連する話題を深く掘り下げている
助産師・ふぃっしゅさんのブログにもこのようにありました。

医療を基本とした産後ケアとは「妊娠・出産に関連した健康問題を、私的な領域にとどまらせることなく社会全体で継続して支援する」ものではないかと思います。(中略)

周産期ケアマネージャーのような存在が保健センターにできるとよいと思います。

産後ケアとは何か26<周産期ケアマネージャがいたらいいな>|ふぃっしゅ in the water)



まだどのような形かはわかりませんが
行政が産後ケアに関わっていく必要性が
専門家の間では認識され始めているということだと思います。


私のブログにもこの1年あまりで、産後入院に関し、
30件を超えるお問合せやコメントがありました。

「使いたかったのに、近くにありませんでした」
「赤ちゃんが入院中で、母親だけ入れる施設を探しています」
「利用したら本当に楽になりました」などなど・・・。

多くの方が産後に頼れるサービスを強く求めているのだと思います。


社会的な困難と健康面の困難


もしかしたら、上記の専門家の方は、
産後うつや、母体の回復が遅れている人のみを
産後ケアの対象として想定されているのかもしれません。

そうすると、私や、コメントをくださった多くの方は
対象外になるなあと思い、複雑な心境ではあります。

産後ケアでは、社会的に困っている妊産婦と、
心身の健康面から困っている妊産婦を比較して
どちらを優先すべきかという問題はずっとついて回るのだと思います。

おそらく、後者が優先されるべきだとは思うのですが
社会的に困っている人たちは、産褥入院を出産前に予約しますし、
健康面から困っている人たちは、出産後に予約するはずです。

早い者勝ちにしてしまうと、健康面で困っている人たちが
入院できる可能性が低くなります。

両者をどのように調整していくのかは、
現場ではとても難しい問題だと思います。

(とはいえ、助産院は出産が予定日からずれるのを前提に
余裕をもって事前予約を入れていると聞きます。
常時、空きベッドを確保している状態が普通のようですので
産後の予約では産褥入院が絶対にできないかというと
そうではないのかもなと思います。)

いずれにしても、産褥入院を受け入れる施設数が増えれば、
産褥入院の予約もこれほど困難ではなくなり
多くの人が利用できるものになると思いますので、そのことに期待しています。


毎日新聞「産後ケアのいま」感想まとめ


毎日新聞の「産後ケアのいま」の記事に対する私の感想をまとめると

「医療福祉的な産後ケア(心身の健康に問題のある人が対象)も
まだ手探りの状態なのに
社会福祉的な産後ケア(家族のサポートがない人が対象)の話に
いきなり議論を展開するのは、時期尚早ではないかなあ」

ということだと思います。

さらには、記事で夫婦のパートナーシップのあり方への問題提起や
「(産後に)親の支援を前提としている社会構造が問題」
という声が紹介されていましたが、やや戸惑いを覚えました。



まだまだ書きたいことがあるような気がするのですが
これでいったん終了します。

長文をお読み下さった方がもしおられましたら、
本当にありがとうございます。

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コメント
非公開コメント

Re: 産後ケア、とても共感致しました

カギコメ拝見しました。どうもありがとうございます。
利用された方のご意見は貴重で、勇気づけられました。
メールをお返ししましたのでご覧ください。

2014-12-01 23:12 from ぽむぽむ | Edit

Re: No title

鍵付きコメントどうもありがとうございます。

読んでいただけて本当にうれしいです。産後、たいへんでいらっしゃったんですね。
お返事したいことがあるのですが、ここでは書けないので、改めてメールを差し上げますね。

どうぞお体を大切にしつつ、お子さんとごゆっくりお過ごしください。

2014-12-04 00:18 from ぽむぽむ | Edit

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